「伝統」を大事にする人気のパティスリー「アールブリュット」が移転のため休業して約一ヶ月、ついに新店舗がOPENする。今回特別に店内の様子をWEBにあげる許可を頂きました。また当社の対談企画に快く応じてくださいました。新店のこと、さらには木村さんがアールブリュットを始めた経緯、「食」「伝統菓子」についての考え方など、興味深い話が盛りだくさん!!ぜひお楽しみください!
ゲスト 株式会社MOKUSON 代表取締役 木村 充均さん
聞き手 株式会社クッキングオン 代表取締役 寺見 真一
対談場所 パティスリー&ブーランジェリー アールブリュット
寺見 新店舗完成おめでとうございます。
木村 ありがとうございます。
寺見 2023年7月14日金曜日、ついにグランドオープンです。木村さんがアールブリュットをOPENされたのが2017年8月。いつから新店舗のお考えはありましたか?
木村 もう、4年くらい前からありました。
寺見 そんな前からですか。物件探しは苦労されてましたね?
木村 そうですね、物件探しは実質3年くらいはかかってると思います。寺見さんにも相談させてもらってました。
寺見 そうですね。その間にコロナがあり、そして戦争も始まってしまいました。
木村 移店を考える中で、コロナが始まって、戦争があって、私の中で「食」への考え方に変化がありました。
寺見 それはどのような感じにですか?
木村 戦争などのニュースに触れていると、やはり日本は恵まれているなと感じました。実際、僕らの世代は食べ物に困るということは、戦時中の時のようにはないですし。その中でロシアの戦争でお菓子の材料が手に入らなくなったり、価格の高騰にも直面しました。また、気候変動などで取れなくなった食材なども増えてきてます。大変なんですが、材料の大切さ、食の大切さに改めて気付けました。今まで当たり前だったことが当たり前じゃないということです。それを全てふまえた上で、どう新しい商品にしていくかと考えるようになりました。その中で、新しい物を考えて食の大切さを次の世代に伝えていきたいという考えがあります。
寺見 様々な業界で材料が手に入らなくなりましたよね。「食の大切さ」アールブリュットの新たな核の部分ですね。
木村 最初、お店を持とうとした時。一番に考えたのが「伝統」です。私の師匠や先輩から教わったフランス菓子の「伝統」
日本は今、様々な職業の伝統文化が無くなっていっていま。その中で自分はフランス菓子の世界に入ったのだから、本当のフランス菓子、昔ながらの基本となるベースを絶やしてはいけないと思ってます。それを絶やさずに、どう新しい物に変えていくのか、根本的なことを理解した上で新しい物を考えて行くか。これを次の世代に伝えていかなければならいと思ってます。私の師匠や先輩がそうしてくださったように。
寺見 伝統の継承ですね、アールブリュットのお菓子が美味しい理由は、ベースにしっかりとした基本があるからなんですね。フランス菓子の伝統が木村さんにも引き継がれているんですね。
木村 ありがとうございます。
寺見 みなさんお待ちかねの新店舗はどんなお店になるんですか?パン売り場の割合も増えたと聞きましたが。
木村 今回の新店舗は2/3がケーキ、1/3がパンなんです。その売場、作業場、また立地など、全てを満たした物件を探してたので苦労しましたが、その甲斐があり、良い物件に巡り合えました。
寺見 今回の新店は、高級感のある造りになってますね。
木村 はい、そこは完全に私の趣味です(笑)
寺見 凄くカッコいいです。私自身も店内に入ると、ラグジュアリー感に浸ってしまいました(笑)ぜひ来店してみなさんに体感してほしいです。
木村 駐車場も12台止めれるようになっています。以前の店舗から言えば.4.5倍くらいの広さになっています。
今回、クッキングオンのインスタグラムとホームページで、特別に店内の様子を初公開!!
寺見 今回、対談が初なので、どうして木村さんがパティシエになられたのか、またアールブリュットを作られた経緯を教えていただけますでしょうか。
木村 はい、実は幼稚園の頃からケーキ屋さんになりたいと思ってたんです。ずっとその夢が一度も変わることなく今に。
寺見 それは凄いですね、でも木村さんらしいですね。
木村 母親の影響が大きいんですよ。母親は看護師で、うちは外食とかにはまったく行かない家だったんですよ。子供の頃は学校の友達からマクドナルド行ったとか、ファミレス行ったとか聞くと羨ましいなとか思ってたんですよ。
寺見 なるほど。
木村 うちの母親は料理が好きで。今思えば、子供にちゃんと栄養バランスのある料理を食べさせたいと思ってたんだと思うんですよ。毎日料理してくれてました。誕生日とかも、母親が手作りのケーキを作ってくれてたんです。
寺見 ケーキも手作りですか。それは凄い。
木村 チーズケーキが凄く美味しかったです。ケーキ屋さんになりたいと思ったのは、母親のそういう姿を見て自然とそうゆう方向になっていったんだと思います。
寺見 お母様が木村さんの礎になってるんですね。修行は県外にいかれてましたよね?
木村 はい、神戸に7年半、東京に6年半いました。その東京にいる時に、母親の癌が分かって、母親に自分が店を構えた姿を見せたいと思い岡山に帰ってきました。母親との時間も持ちたかったですし。
寺見 そんなことがあったんですね。
木村 その後、母親は亡くなったんですが、お店を持った姿を見せれました。本当に感謝しています。
寺見 お話くださってありがとうございます。お母様が居たからこそ、今のアールブリュット、木村さんがあるんですね。
寺見 「アールブリュット」のケーキはフランスの伝統をしっかり継承しつつ、その上に木村さんの様々なエッセンスが散りばめられています。その上で今回気になっているのが、パンの存在です。お店の売り場の1/3をパンにされてますね。
木村 はい、以前のお店もパンは少しあったんですが、新店ではより力を入れています。
寺見 それはどんなお考えからですか?
木村 はい。元々はフランス、ヨーロッパではパン屋さんがケーキを作り始めたんですよ。それでパティスリーという部門が出来たんですよ。私の中で「伝統」を大事にしたい思いがあり、お店でもパンは販売してたんですよ。
寺見 そうだったんですね。
木村 まぁ、昔なんで、腐らないケーキというか。例えばチョコレートだけのケーキだったりとか、そうゆうのが始まりだったんですよ。それが時代と共に「パティスリー」と「ブーランジェリー」が分かれていった感じです。
寺見 ブーランジェリー?ですか?
木村 フランス語でパン屋さんのことです。
寺見 そうなんですね。
木村 日本のパン屋さんって、外国から入ってきたパンを変化させてる店があまりにも多いんですよ。日本人は、良い意味でも悪い意味でも勤勉で、どんどん新しい物を生み出しちゃう、例えば総菜パンとか。それも間違いとかではないんですが、フランス伝統のクロワッサンだったりとか、バケット、あとルバンと言って小麦粉の酵母を使ったパンをされてるとこは本当に少ないんですよ。元々、本来のパンってうま味がありますし。フランス人なんか背中にバケット一本背負って歩いて、普通に一日一本ランチで食べるんですよ。それってパンの粉のうま味、酵母のうま味があって、何も付けなくてもうま味だけで食べれるんですよ。それが伝統のパンなんです。アールブリュットでは、伝統をしっかり守ったパンを基本に作って、お客様にも、次世代の若い方にも伝統の味を知って頂きたいと思ってます。
寺見 私もフランスに行った時、本当に街行く何人もの人がバケットを紙袋から飛び出した状態で買って帰る姿に感動しました。映画みたいだと(笑)
木村 そうなんです。ケーキだけでなく、パンもちゃんと伝統を伝えたいし、それを若い世代にも伝えていきたい。そしてちゃんとした商品をお客様にも提供したい。適当な物を売りたくないんですよ。それが私の芯なんですよ。
寺見 今回、それをより現実にするために新しいメンバーが増えましたね。
木村 はい、羽田(ハタ)さんですね、羽田さんと出会って私の考えてた事がより具体化しました。この人とだったら私の思っている物が作れると。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さて、羽田さんとは一体、中編に続きます
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・中編はより専門的な「伝統」の世界へ