中編から続き、今回は伝統フランス菓子の名前の由来など、面白い話が盛りだくさん!
今後の木村さんの動向は?東京店は?
私自身も大変勉強になった対談。ついに完結!
ゲスト 株式会社MOKUSON 代表取締役 木村 充均さん
聞き手 株式会社クッキングオン 代表取締役 寺見 真一
対談場所 パティスリー&ブーランジェリー アールブリュット
寺見 後編がスタートします。みなさんはもうアールブリュットさんの新店舗には行かれたでしょうかね?
木村 来ていただいてると嬉しいですね。
寺見 今回の後編は、少しフランス菓子の知識みたいなことを教えて頂きたいと思います。普段、何気なく頂いてるお菓子のマメ知識といいますか。
木村 なるほど、面白いですね。この対談は一般の方も読まれますが、同業者の方も結構読まれてるようなので、少し専門的な話もしますね。一番読んで頂きたいのは若いパティシエ・パティシエールの方達です。
寺見 そうですね。フランス菓子の名前、名称を中心に聞いてみたいです。
木村 伝統フランス菓子には、名前にもしっかりとした意味がありますよ。
寺見 では、前回の中編の最後に「クレームパティシエール」という言葉を私が言いました。
木村 そうですね、言われてました。
寺見 木村さん、教えてください(笑)
木村 はい(笑)カスタードクリームのことですね。これはパティシエの基本のクリームです。名前にもパティシエと付いてるんですが、これが炊けなければ、パティシエではないと言っていい物です。
寺見 なるほど、基本なんですね。でも、その基本がどこの世界でも一番難しいなどと言われたりしますよね。
木村 そうですね「クレームパティシエール」は、お店ごとに味が違います。各パティシエの好みもでますし、非常に奥の深い物です。
寺見 僕の大好きな、アールブリュットさんの「ミルフイユ」には使われてますね?
木村 寺見さん覚えましたね(笑)
寺見 今まで「ミルフィーユ」と思ってたんですが、違うんですよね。なぜなら名前にもちゃんと意味があるんですよね?
木村 そうですね「ミルフイユ」の「ミル」は千枚・数千枚という意味で「フイユ」が葉っぱって意味なんですよ。秋の落ち葉を踏んだ時にバリバリバリっと音がしますよね。「ミルフイユ」はあれをイメージしたお菓子です。ですからミル「フィーユ」と伸ばすと意味が変わってきます。
寺見 なるほど。
木村 「ミルフイユ」は生地の折り方、重ね方、それに「クレームパティシエール」その店の腕が分かるお菓子だと思います。非常に手間ももかかります。私も追及し続けてる商品ですね。
寺見 奥が深いですね。
木村 有名なパティシエの方でも「ミルフィーユ」と言われてる方もいますが(笑)
寺見 でもそうゆう所から、本当のことが段々変わってきたりするんですよね。
木村 あと。例えば「モンブラン」は栗をペーストしたクリームを細くウネウネっとケーキの上に絞り出してある物が「モンブラン」って思われてる人が多いですが、「モンブラン」って、白い山という意味なんですよ。アールブリュットでは、白いモンブランが珍しがられますが、あれが普通なんですよ。例えば中がチーズのケーキになってたとしても「モンブラン」なんですよ。
寺見 なぜ、あのウネウネっと栗を絞ったケーキが、日本では「モンブラン」って定着したんでしょうね?
木村 はい、それは日本人の方がヨーロッパに行かれて、モンブラン(山)を見て、その地元で作られてたのが栗のケーキだったんですよ。それを見た方が、東京の自由ヶ丘のお店の方で出された「モンブラン」が、あの黄色いウネウネっとしたモンブランでした。それが広まったからですね。
寺見 そうだったんですね。何か他にも色々ありそうですね。
木村 そうですね。日本人って、努力家で勉強熱心なんで、どんどん商品を開発していくんですが、元々の伝統を変えちゃっていってることもあります。
「ガトーショコラ」とかはどうですか?
木村 はい「ガトーショコラ」の意味は「チョコレートケーキ」なんですよ。でも日本人のイメージって白いホイップが乗った濃い目のチョコレートケーキみたいになってますよね。あれも何時からか日本人が変えちゃってるんですよね。
寺見 名前の意味とか分かってくると面白いですね。私自身も勉強になります。
木村 テレビのバラエティー番組で、海外の和食屋さんが料理してるの見て、お寿司や和食が凄く変わった形になってて笑うことあるじゃないですか。ケーキやパンでも逆のことがおこっているかもしれません。フランスや、ヨーロッパの方が日本のケーキ屋さんやパン屋さんを見て、驚いたり笑ったりしてるかもしれません。
寺見 そうですよね。「パティスリー」と名乗るとこには伝統をしっかり守ってほしいですよね。
木村 そうです。無理ならケーキ屋さんと名乗るとかですね。あの白十字さんですらパティスリーと名乗っていませんからね。
寺見 確かにそうですね。
木村 白十字の二木さんには少しお世話になってまして、工場の製造の流れに圧倒されました。素晴らしかったです。白十字さんは独自の伝統をしっかり築かれています。
寺見 日本のケーキ屋さんで定番の「苺のショートケーキ」とかはどうですか?
木村 フランス菓子にはないですね。生クリームのケーキは、ほぼないんですよ。
寺見 そうなんですね。知らないことばかりです。
木村 どっちが良い悪いではないんですが、パティスリーと名乗ってるお店は、伝統を大切に継承して行くべきだと思います。
寺見 私の大好きな物に「エクレア」があるんですが、「エクレア」とは、どうゆう意味なんですか?
木村 「稲妻」ですね。
寺見 え、なんかイメージと違います(笑)
木村 これ結構面白いんですが。エクレアって細長い生地の中にクリーム入ってて、横から食べるとクリームが流れ落ちてきますよね。だから稲妻のように素早く食べなきゃいけないっていう意味なんですよ。
寺見 面白いですね!!
木村 結構フランス菓子の名前の意味って、奥深いんですよ。
寺見 木村さんの今後の目標といいますか、展望など教えて頂けますか?
木村 そうですね。人間死ぬまで食べることは続くと思いますので、最後まで「食」に対して追及を深めていきたいです。今後はより幅を広げて、いかに沢山の人を「食」で幸せに出来るかを考えていきたいです。
寺見 単刀直入に聞きますが、東京出店などは考えておられますか?
木村 考えてます。その他にも色々と考えてます。
寺見 楽しみにしています。非常に忙しい中「対談」に出演してくださり、ありがとうございました。
木村 こちらこそ、楽しかったですよ。ありがとうございました。